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 オフィスのペーパーレス化・電子化


■ 第1回  縮み行く日本        <2011年08月26日号>


 最近の驚きの1つに「日立と三菱重工の統合に向けた発表」があります。
今の日本は国力からみて大手企業が過剰であり、更にその下に関連企業が連なり、昔さながらの城下町意識で経営が成り立っています。

 東電を筆頭とする電力10社、自動車8社、電機8社のほか土木、建設、鉄鋼、金融、商社等々が、各々何百社という関連企業を傘下に治めています。
10年前、電力10社の設備投資額は5兆円でしたが、最近では2兆円に減っています。

 第一生命経済研究所(長浜利広氏)は08年度中で35兆円の生産(出荷額)と96万人の雇用が海外に流出したと発表しています。
日立と三菱重工の統合も、そんな危機感から世界に打って出ようという事でしょうか。

 一方、国内で頑張る企業としては「特徴ある差別化」を進めないと、生き残ることはできません。その差別化の結果から、
    @お客様が求めてくれるか、
    Aコストが下がるか、
の2つが大切で、「効率や生産性が上がる」ということはAのコストに影響してきます。

 例えばオフイスがペーパレスの快適環境になっても、そこで社員が雑談ばかりしていては、経費効率が悪く生産性は上がりません。

 ペーパレスというと「紙資料のないオフイス」という夢のような世界をイメージしますが、ペーパレス化推進者の報告では、最近これに取り組む企業が増えているようです。

 弊社では昭和58年からパソコンCADシステムを販売してきましたが、当時の設計オフイスには必ず「図面収納」のキャビネットがありました。

 CADを販売する目的は紙図面をなくすことではなく、製図の効率化を図ることが中心で、結果的に図面のペーパレス化にも貢献すると考えるべきでしょう。
従ってペーパレス化で、紙の収納スペースをなくすことに主目的を置くのは疑問です。

 それは「本来のファイリングシステム」である情報の収集、選別、保管、検索、加工、活用という領域の効率化に主眼を置くべきであると考えます。
 その中で、ユビキタス時代に対応できるさまざまな技術が、これからの差別化のポイントになります。

次回はその導入事例の一部をご紹介していきたいと思います。

紙資料のないオフイス




 オフィスのペーパーレス化・電子化


■ 第2回  失敗しないペーパーレス【1】      <2011年09月27日号>


【大手企業の導入事例】

 近年、ペーパーレス化に「成功した」とか「失敗した」という話を耳にします。
一般的に「始めに紙を減らすことありき」に執着しすぎると失敗する例が多いようです。

 即ち、オフイスにおける業務プロセスの効率化に主眼を置き、効率化の周到な段取りを講じることによりぺーパーレス化は成功します。

 極端な話ですが、結果的に紙が増えても業務効率が改善され売上が向上すれば成功です。
目先のコスト改善より5年、10年の継続可能な業務プロセスの改善に取り組むことで失敗のリスクを抑えていくことになります。

【ペーパーレス化 -paperless-(電子化)とは】

 オフイスで紙を使って情報の収集、選別、保管、検索、加工、活用などを行ってきた状態から、コンピュータ・システムでその全てを行なうことにより、業務の単純化、標準化、効率化に取り組むことである。 ビジネス・プロセスの効率化やコスト低減の取り組みの一環。

【導入事例:】N電話局の設計部署、施設管理部署
(1)電子化の背景

設計図書、構造計算書原紙、マイクロフィルムなどが紛失したり、汚れたりしたほか、マイクロフィルムの読取・出力機器が故障した。更に保管場所がなくなったことから、過去の図面を探すのに地下倉庫まで行き来し、結果的に見つからないことが多発していた。

(2)業務内容

建築・工作物全般、電気通信・コンピュータ用電力設備並びに情報通信システムの業務全般

(3)電子化の概要

@企業内の業務プロセスの見直し。(紙ベースからデジタルベース)
A企業内の全国ルール(又はローカルルール)の仕様統一
Bデジタルファイリングシステムの企画、開発、導入、教育、保守等
C企業内の文書、図面の電子化(約1千万枚)
D最新データ、修正データの更新作業のしくみ作りと実施

(4)成功理由の4点

@徹底したビジネス・プロセスの見直し

業務プロセスを従来の紙ベースに近いやりかたで行えるよう、システムやデータベース改修、運用方法を変更し、全員が無理なく運用できるようにした。
結果、無駄な紙のコピーや作業工数を削減することができるようになった。

A紙よりデータは使えるという意識を全員に根付かせた。

これまでは、紙文書、図面などを地下倉庫まで探しに行っていたが、データ化することで各端末から数秒で検索できるようになり、効率的な作業を実感することで、積極的に活用されるようになった。

B最新データ、修正データの更新作業の環境をきちんと整えた。

データベースの更新作業については、専門業者に委託し、定期的に更新作業を行うことにより、データを常に利用できる状態に保てるようになった。

C検索スピードの向上を担当者と模索した。

フォルダ名、ファイル名だけでなく、実業務でよく使用するキーワードで検索できるなど、現場的発想のシステムを心がけた。
また、検索した情報からオリジナルデータ(ワード、エクセル、PDF、CAD等)をすぐに呼び出せたり、市販地図ソフトからの検索連携ができたりと、現場からのアイディアを実現した。

(5)失敗しないペーパーレス

以上のように紙を減らす事に執着するのではなく、オフイスの業務プロセス効率化に主眼を置き、適切な手立てを講じることにより、ぺーパーレス化が成功したと言えます。



次回は、失敗しないペーパーレス【2】で、中小企業の導入事例の一部をご紹介していきたいと思います。





 オフィスのペーパーレス化・電子化


■ 第3回  失敗しないペーパーレス【2】      <2011年10月27日号>


【震災から学ぶ・・・】

3.11は「様々な驚き」を与え、「価値観の転換」「生きる厳しさ」を教えてくれました。
「驚き」の1つは、世界の製造業に欠かすことの出来ない多くの部品素材を、日本が提供しているということでした。 それは裏返せば、日本が過当競争の中で高い技術や品質に取組んで来た証といえます。

「価値観の転換」とは、縮み行く市場でこのままひしめき合っていると、やがて日本は世界の下請けになるという危機感です。
従って「座して死を待つより、思い切って世界に出よう!」という判断が、価値観の転換です。

「生きる厳しさ」とは、いうまでもなく原子力発電での「想定外」といわれた問題の中で生きている日本人の生活環境のことです。

これらの教訓から今や日本は「再生でなく変身」することが必要であると思います。
再生はイメージ的には過去の延長線上が強いが、変身は変ることです。思い切って「オフィスや工場のない経営」に挑戦し、変身することが差別化へのチャンスであると思います。


【中小企業の導入事例】

ペーパーレスによる経営は「再生でなく変身」であるとも言える事例をご紹介します。
導入前は、紙・コピー・電話・FAX等の使い慣れたコミュニケーションツールでしたが、変身は、WEBシステムを導入することからコミュニケーション・システムの転換が実現しました。

【導入事例:】T水道メーカーの商品開発部署、営業部署、情報システム部署
(1)電子化の背景

給水システム(給水栓、止水栓、継手、サドル分水栓及び関連装置)の製造、販売を行なうT社は、全国営業拠点からの図面、資料の問い合わせが頻発しており、問い合わせに対して、紙図面を探し、コピーし、FAXする作業工数に時間がかかっていた。 さらに、商品開発部と営業現場の図面、資料情報にズレが生じるトラブルが問題となっていた。

(2)電子化の概要

@企業内の業務プロセスを、紙・FAXベースからWEBベースに変更した。
A商品開発部と全国営業拠点との仕様を統一した。
Bデジタルファイリングシステムの企画、開発、導入、教育、保守等を実施した。
C企業内の文書、図面の電子化(約1万枚)を行った。
D最新データ、修正データの更新作業のしくみ作りと実施に取り組んだ。

(4)成功理由の4点

@徹底したビジネス・プロセスの見直し

商品開発部の業務プロセスは、なるべく従来の紙ベースに近いやりかたで行えるようしたが、営業部は新しいWEBシステムを導入し、教育によって全員が運用できるようにした。
結果、無駄な紙のコピー・FAXや作業工数を削減することができた。

A紙よりWEBシステムは使えるという意識を営業マンに根付かせた。

導入前は、紙文書、図面などを電話で問い合わせしてFAXで図面をもらっていたが、 WEBシステム化が根付くことで、各端末から数秒で検索できるようになった。




B最新データ、修正データの更新作業の環境をきちんと整えた。

データベースの更新については、初期段階は専門業者に委託したが、慣れてきた段階で、社内の図面登録担当者が定期的に更新作業を行うことにより、データを常に最新データの状態に保てるようになった。

C検索スピードの向上を担当者と模索した。

よく使用するキーワードで検索できるなど、現場的発想のシステムに心がけ、簡単にシンプルにデータベースを更新できるようにした。
更に、図面だけでなく様々なオリジナルデータ(ワード、エクセル、PDF、CAD等)をすぐに呼び出せたりするなど、現場からのアイディアを実現した。




(4)失敗しないペーパーレス

以上のように、思い切ってコミュニケーションツールを転換することで、図面、資料等情報の一元管理が実現し、業務プロセスが単純・効率化されました。 そして最終的には、営業所へ送る図面のFAXがゼロになり、ぺーパーレスは成功したと言えます。

また、WEBシステムの導入により、図面、資料情報の一元管理が実現し、紙の運用では、不十分であったセキュリティについても、強化することができるようになりました。







 オフィスのペーパーレス化・電子化


■ 第4回  失敗するペーパーレス(大企業の導入事例)   <2011年11月29日号>


【価値観転換の勇気・・・】

「会社が生残るためには価値観を変えよ」といいますが、そんなことは誰でもいえます。問題はそれが実践出来るかどうかということです。

弊社は6年前、オフィスでの喫煙は自由で社員の机の上は資料で埋まっていました。予てより私は「ペーパレスオフィス」の夢をもっていました。
その狙いは「IT推進で付加価値を上げる」ことです。
未だに遠い夢の世界ですがそのイメージは次のようなものでした。

 @ 社内での完全禁煙 ⇒喫煙は別の場所で行なう。
 A 紙資料は見当たらない ⇒不在デスクの上は何もない。
 B 情報はサーバに保管、PCにはデータを取り込まない。 ⇒PCを個人持としない。
 C 社員各自に定められたデスクがない ⇒出社順に席に着く。

実現に向けて先ず5SとPマーク取得委員会を設けてその狙いを進めました。しかし数年後リーマン不況に出会い、道半ばで中断しましたが、経営者の勇気が欠けていたといえます。
現在における現象面の採点は、@は100点、Aは70点、B50点、Cは0点の状態です。
それでも6年前には考えられない光景ですが、中途半端は経営者として失格です。


【大手企業の失敗事例】

ペーパーレスにおいて、まさに「価値観転換の勇気」を持てず中途半端な取組みに終わってしまった失敗例をご紹介します。
この大手企業の場合は組織全体に浸透せず、自然消滅した典型的な事例と言えます。

【導入事例:】大手重工業メーカーの商品開発部署
(1)電子化の背景

設計業務において、部品カタログ(冊子)を参考にして設計や部品の注文を行っていたが、設計者が100名以上存在し、カタログの紛失や破損の問題が頻発していた。
そこで、カタログ(並べると40M)を全て電子化し、何時でも社内LANから検索できるようにして業務の効率化を考えた。

(2)事例にみる電子化の概要

@企業内の業務プロセスの見直し。(紙カタログから電子カタログへ)
A設計部署、技術管理部署内で仕様を統一。
B専用ファイリングシステムは導入せず、一般的な検索方法を採用。
C部品カタログの電子化(約40万枚)。
D最新カタログの更新作業のしくみ作りと実施。

(3)電子化実施後の状況

 当初、カタログの紛失や破損の問題を解決し、社内外のやり取りも電子化されたカタログを受渡しすることにより、業務を効率化できる予定であった。

 しかしながら、現実には、40万件の電子カタログが保存されているサーバから、いざ必要な電子カタログを利用しようとしても、限られたキーワードでしか検索できないため、以前の紙カタログの利用時より時間がかかる状況になった。
 また、運用後しばらく経過すると、カタログの変更・追加が、随時電子カタログに反映されないという状況が頻発するように立ち至った。

上記のような状況から、結果的に紙カタログを利用した方が便利ということになり、電子カタログでの運用が定着せず、次第に利用されなくなってしまった。

(4)失敗した理由

@ビジネス・プロセス見直しの不徹底。

「始めに電子化ありき」ということで、カタログの紛失や破損の防止に重点を置き、安易に紙カタログから電子カタログへプロセスを変更してしまい、本来ペーパーレス化することで検討すべき効率的な業務プロセスの見直しが不十分であった。

A検索方法の仕様統一に関して検討が不十分であった。

専用のファイリングシステムは導入せず、一般的なPDF形式のフォーマットを採用し、検索方法についてもエクスプローラーやPDFの「しおり機能」等の一般的な機能を活用した。
その結果、システム導入コストはゼロであったが、誰もが納得のいく検索方法に至らなかった。

B更新作業の不徹底。

最新カタログの更新作業については、専門業者に委託する計画であったが、組織変更の方針転換により、更新作業は実施されなかった。

C検索スピードの向上対策が不十分であった。

一般的な検索方法では検索スピードの向上には限界があり、根本的な解決が得られない。
特にパソコンに不慣れな社員は、どうしても紙カタログの方が使いやすいという事から、年齢の高い人から逆戻り現象となり、電子カタログの認知度が上がらなかった。

(4)失敗するペーパーレス

「価値観転換の勇気」と粘り強い取組みが中途半端に終わると、電子化メリットを明確に共有できずペーパーレスは失敗してしまうという一つの事例を紹介しました。

電子化とは、単純にペーパーレスを第一に考えるのではなく「業務プロセスの単純化、標準化、効率化」に徹底して取組むことが成功の基本条件であり、紙をなくすことが目的ではないということであります。







 オフィスのペーパーレス化・電子化


■ 第5回  これからのペーパーレス(こんなに便利な書類・図面管理術)
                                      <2011年12月26日号>


【IT(情報技術)を味方に・・・】

日本の「間接部門の効率の悪さ」は特筆すべきで、その生産性はOECD加盟国中20位です。
その現象は多くの場面に見られますが、営業活動そのものや事務処理の効率にもあります。

更には国の規制問題や、前述(シリーズ第1回8/26号)の「過剰な大手企業」や、その系列企業が幅を利かせ、独立系の中小企業との二重構造を作り出していることにもあります。

ところが今や、そんな構造が音を立てて崩れて行こうとしています。
それが「インターネットとIT(情報技術)」の進展です。

それは国家でさえ制止切れない勢いで世界を変え、情報は書物や人対人の伝達スピードでは追いつけない速さで世界を駆け巡ります。

企業はオフイスのペーパーレス化や、資料の電子化などの進め方如何で他社との差別化が進むでしょう。
クラウドコンピューティングとipad、iphoneなどの普及は相乗効果を生み、オフイスは物理的存在から仮想空間での存在となります。

突然手ぶらで現れた営業マンが、訪問先のパソコンでプレゼンを行い、仕様変更や見積りをすることも可能となり、その全活動が即時にデータベース(DB)に報告(記録)され、発注や生産手配などのオペレーションに移ります。

このようなことを、好むと好まざるに関らず実践する企業が生き残ることになります。
わが国の間接部門の生産性がOECD加盟国中20位というのが、そもそも大問題なのです。


【こんなに便利な書類・図面管理術】

今回は、間接部門の効率化で、独立系の中小企業が取組んだ事例として「こんなに便利な書類・図面管理術」という観点から、 ペーパーレス化の一例をご紹介します。

■「こんなに便利な書類・図面管理術」の3大特徴

  1.FAX図面の有効活用
  2.CAD不要の図面修正・管理
  3.かんたん帳票連携

[現状]

H社では顧客からの必要図面をFAXで受信していたが、納品後は図面を間違えないために、すべて返却または廃棄していた。

  • 従ってリピートオーダーや類似注文の場合には、その都度該当図面を探してFAXしてもらう必要があった。
  • 製造過程で発生する手直しをFAX図面にメモをする(加工ノウハウ、単価修正など)が、その後廃棄されるため、情報検索ができない不便があった。

1.FAX図面の有効活用

スキャナ・コピー・FAX機能を持った最新型複合機の導入で、受信したFAX図面を顧客毎に自動仕分け・PDF化し、サーバに保存することで、今まで廃棄していたFAX図面をより有効活用することが出来た。



2.CAD不要の図面修正・管理

通常CAD図面を修正するには、CADシステムや原本図面が必要となるが、安価なスケール機能をもつ画像修正ツールを導入することで、保存のFAX図面をあたかも自社で作成した図面のように、修正や変更が可能になった。
(例:受注番号、製品番号、図面番号の付与や簡易図面修正など)。

また現場での仕様変更や元請けに確認した内容を追記・修正することで、常に最新状態の図面で保存でき、修理・メンテナンスの迅速化・効率化が図れた。



3.かんたん帳票連携

登録されたFAX図面と、注文書・請求書・納品書等の帳票を簡単に連携することで、過去に納品した図面がどのようなものだったか直ぐに確認でき、またFAX図面に注文書番号などを付与し、請求済/未請求のチェックを行い、請求漏れの確認が出来るようになった。



以上の事例は高価なソフトウエアシステムの構築でなく、それぞれの現場にあった仕組みを、簡単で低コストによる効率化を進めたものです。
今やITは「情報の収集・整理・活用の進め方」を如何なる意識で取組むかが重要です。

8月の第1回より5回に亘り、オフイスのペーパーレス化に関する事例を述べてきました。
それは弊社での1営業マンのささやかな経験からとはいえ、「間接部門の効率化」という重要課題に迫るものであり、将来のわが国間接部門の生産性改善に一策を暗示するものです。
わが国の「間接部門の生産性」がOECD加盟国中20位という屈辱は、国の産業構造にも原因があるとはいえ、優れたIT活用を先取りし、「モノづくり」と同様、世界の上位を目指さなければならないと思います。
弊社はこれからも、ITの活用について「皆様のご支援の中で」鋭意努力して行きたいと願っております。 ご精読有難うございました。

  (次回からは別のITテーマでお目にかかりたいと思います)




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